俺たちは大人しく、行列に並ぶ事にした。約2時間近く待たされることになったが、おかげで
若林と普段あまりしないおしゃべりを楽しむことが出来た。いつもはサッカーに関連した話題ば かりだが、今日は周りに家族連れが多いせいか、自然に互いの家のことが話題に上った。ま ぁ、うちの家庭環境はあまり大声で話せるものではないので、俺が話題として提供したのはも っぱら妹のマリーのことだけだが・・・。
ようやく順番が廻ってきた。俺たちは並んでコースターの席に座った。安全バーが下ろされ、
すぐにコースターが動き出した。最初はゆっくりと、段々にスピードを増し、急傾斜の山をいくつ もいくつも駆け抜けていく。かなりの迫力だ。しかし若林はカメラを構えて、のんびり言った。
「思ったより、速くないな。おい、シュナイダー、こっち向けよ」
若林のリクエストに応えて、カメラの方を向いて笑ったり、手を挙げたりしてみせているうちに、
コースターは終点に辿り着いた。若林がコースターを降りながら言った。
「一応、眺めのいい所でシャッターを切ったつもりだけど、写ってなかったらごめんな。でも、
シュナイダーの顔はちゃんと写ってるぜ」
「そうか。ありがとう」
ふと、俺たちの後ろに座っていた女の子のグループが、少し離れた所からこっちを見て、くすく
す笑いあっているのに気付いた。男二人でコースターに乗り、写真を撮り合う俺たちが滑稽に 見えたのだろう。
しかしそうではないことに、すぐに気がついた。彼女たちは俺が見ているのに気づくと、顔を
輝かせてこちらに向かってきたのだ。いかん! 逆ナンだ! 若林との楽しいデートを、女なん かに邪魔されてたまるか!
「行こう、若林!」
俺は若林の腕を取って、その場から駆け出した。若林が慌てて叫ぶ。
「シュナイダー!? なに急いでるんだよっ?」
「・・・次のアトラクションに、早く並ぶためだ!」
さて、次はどこに行こうか。
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