「・・・・・・日本のことだが・・・・・・」

  俺はとりあえず若林が喜びそうな話題を選んだ。案の定、若林が身を乗り出す。

  「日本が、どうしたって?」

  「・・・その、以前話していた、日本の選手の話を、もう一度聞きたいと思って・・・」

  「翼のことだな! よし、まずはあいつのプレイスタイルだけど・・・」

  若林が嬉々として話し始めた。別に、翼のことだとは一言も言ってないのだが、若林は当然

 のように決めつける。まぁ、いい。翼の話なら何度も聞いた。そのうち話題が重複してきて、

 話が途切れるだろう。そうしたら、こっちも話を切り出そう。




  ・・・・・・二時間が経過していた。若林の話は一向に途切れない。

  「信じられるか? 普通の選手なら思いもつかないぜ? それを翼は・・・」

  また翼のスーパープレイの話だ。だが、さっき聞いたのとは微妙に状況が違うらしい。

  「あいつがいると、チームの士気がまるで違うんだ。何て言ったいいかなぁ・・・」

  どうとでも言ってくれ・・・。

  「あいつの実力なら、今でもプロで充分通用するぜ。どこのチームがいいかなぁ・・・」

  どこでもいい!

  結局、見上が帰ってくるまでの間、若林は翼の話を止めなかった。




  見上が帰ってきたのを潮に、俺は帰ることにした。若林が玄関まで見送ってくれる。

  「話が途中になっちまったな。続きは明日ってことで」

  ・・・・・・まだ、続きがあるのか。

  俺は適当に返事をして、逃げるように若林の家から退散した。それにしても・・・。

  大空翼、むかつく!!




バッドエンド 6   



  あとがき
 翼の話を始めたら、源さんは止まりません。シュナが、翼に夢中な源さんではなく、翼に敵意を抱くところが、惚れ 
 た弱みというヤツですね。