全日本チームの強化合宿が始まり、ドイツでプロとして活躍している若林も、帰国して合宿に参加することになった。帰国日程の関係で、若林だけが遅れて合流する形になり、若林が合宿所に着いたのは、夜の10時を廻っていた。その日の練習は全て終わり、あとは就寝するのみという時間帯だった。
 遅れてくる若林に気を遣ってくれたのか、あてがわれた部屋は一人部屋だった。荷物を置いて、窮屈なスーツを脱ぎ、若林はやっと一息ついた。
 コンコン。
 ノックの音がした。誰かが明日の練習に関する連絡事項でも報せに来たのだろうと、若林は軽い気持ちでドアを開けた。
 ドアの前に立っていたのは、カール・ハインツ・シュナイダー。
 「お、おまえ、なんで日本に・・・」
 「シッ!」
思わず大声を出しそうになる若林の口を塞いで、シュナイダーは強引に室内に入り込んだ。素早くドアを閉めて、窓にカーテンを引く。若林は大声を出さないように、つとめて普通の声で尋ねた。
 「・・・・・・なんで、日本にいるんだよ?」
 「若林を尾けてきた」
 「はぁっ!?」
 「全日本の合宿に参加してしまったら、俺とは当分会えない。その上、おまえの周りに懐かしい母国の若い男が、うじゃうじゃいる事になる。気になって当然だろう」
 「俺が浮気すると思って、心配でついて来たってことか?」
不本意な疑惑を持たれたと思い、若林がきつく問い返す。シュナイダーは首を振る。
 「そうじゃない。おまえが襲われないか、心配なんだ」
 「そんな事、起こるわけないだろう。全日本のメンバーに、そういう趣味はない」
 「判るものか。俺だって、若林に会うまでは、至ってノーマルだったんだ」
 「俺のせいで、異常になったって言うのか?」
シュナイダーは若林の襟首を掴み、強引に引き寄せると乱暴に唇を重ねた。そしてすぐに唇を離すと、簡潔に言い切った。
 「そうだ。おまえを見ると平常心を、保っていられない」
 「おまえがおかしいんだよ」
 「ああ、今の俺は異常だ。おまえが傍にいるからな」
シュナイダーは若林を抱き寄せる。
 「俺は誰にも見られないよう、夜明けまでには姿を消す。だから、それまでは一緒にいさせてくれ」
 「・・・・・・構わないが、本当に夜明けまでには出て行ってくれよ」
 「判ってる」
シュナイダーは部屋の明かりを消した。室内に差し込むのはカーテンの隙間から入り込む、街灯のわずかな光だけになった。その薄明かりに目が慣れてくると、シュナイダーが手を差し伸べているのが判った。導かれるように、二人並んでベッドに腰掛けると、すぐに唇を塞がれ、服を脱がされる。シュナイダーが低い声で囁く。
 「日本にいる間、俺以外の男に目が向かないようにしてやる」
俺はそんなに信用がないのかと、若林は切なくなった。

 シュナイダーの愛撫はいつもより執拗だった。吸い付くようなねっとりとしたキスを全身に浴びせられ、若林は悶える。
 「・・・よせよ・・・跡が残っちまう・・・」
 「跡を残しているんだ」
 「・・・なんで・・・?」
 「キスマークだらけの身体を、他の奴に見られたくないだろう。若林が不用意に裸を見せる事がなくなる」
それじゃあ練習後に、皆とシャワーに行く事も出来ない。若林が抗議しようと口を開きかけた途端、シュナイダーが挿入を始めて、若林の口から意味のある言葉を奪い去ってしまった。

 幾度目かの行為を終えて、若林はくたくただった。旅の疲れも取れないうちにいつもより激しい情事を繰り返されて、体が泥のようだ。もう眠りたい。だがシュナイダーの手は若林のペニスをまさぐり、次の行為への準備を始めている。若林は息も絶え絶えに言った。
 「もう・・・やめて・・・くれ・・・」
 「まだだ。まだ夜明けまで間がある」
 「これじゃ・・・練習に出られない・・・」
 「時差ぼけだと言って、休んじまえ」
 「・・・シュナイダー・・・おまえ、疲れてないのか・・・?」
思えばシュナイダーも若林にくっついてきて、強行軍の日程で日本に来た筈だ。しかしシュナイダーは疲れたような素振りを、微塵も見せない。シュナイダーが言った。
 「今日を逃したら、若林と当分出来ないんだ。疲れている暇なんかない」
そして容赦なく若林の中に攻め入り、力強く突き上げる。堪らず若林が声を上げた。

 悲鳴・・・・・・?
トイレに起きだして合宿所の廊下を歩いていた翼は、甲高い悲鳴を聞いた気がして足を止めた。耳をすませてみるが、もう悲鳴は聞こえない。だがどこからか、ギシギシと何かがきしむような音が聞こえてくる。翼は音のするほうに歩き始めた。
 廊下の突き当たり、一番奥の部屋。物音はここから聞こえていた。
 ここは今日から合宿に合流した、若林くんの部屋だ。
翼はドアに耳を当ててみた。さっきの物音が、更にハッキリ聞き取れた。ここに間違いない。そしてもうひとつ、物音に重なるようにふた色の激しい喘ぎ声が聞こえてきた。
 翼は物音を立てないように、そっとドアを開けた。
 暗い室内を窺うと、壁際のベッドにうっすらと二人の人影が見えた。一人は仰向けに横たわり、もう一人はそれに覆い被さるようにして激しく腰を動かしている。腰が揺れるたびに、二人分の体重を支えているベッドがギシギシときしんでいた。窓から差し込む僅かな光が、上になった男の金髪をぼんやりと照らしている。
 翼はそっとドアを閉めた。セックスに夢中になっていた二人は、翼に覗かれていたことに全く気付いていなかった。

 夜明け前、約束どおりシュナイダーはそっと部屋を抜け出し、人目につかぬよう帰っていった。これで漸く眠れると、若林は瞼を閉じた。
 どれほどの時間が経っただろうか。
 下腹を突き上げる激しい衝撃に、若林の眠りは一瞬のうちに破られた。
 シュナイダー? 帰ったんじゃなかったのか!?
若林はベッドから飛び起きようとした。しかし起きられない。若林は自分の両腕がベッドの柵に、タオルで括り付けられているのに気付いた。
 シュナイダーじゃない。シュナイダーはこんなことしない。
 誰だ!?
何者かが若林の内壁をえぐるように動いた。若林は痛みに我を忘れて、叫びだしそうになった。だが、すかさずタオルが口に突っ込まれ、若林の声を封じてしまった。
 「駄目だよ、若林くん。大声出したら、みんなが起きちゃうよ」
 ・・・・・・その声・・・・・・翼!?
信じられないような気持ちで、若林は自分を犯している相手の顔を見上げた。まだ部屋の中は薄暗く、ぼんやりとしか見えなかったが、その輪郭は紛れもなく翼のものだった。
 「おはよう、若林君。ごめんね、手荒な事して。でも、もし抵抗されちゃったら厄介だなぁーと思って」
多少息が上がってはいるものの、その屈託のない明るい声は翼に間違いなかった。
 「でも驚いたなぁ。堅物だと思ってた若林くんが、ドイツから男を引っ張り込んで、合宿所でエッチしちゃうなんてさ」
若林の目が大きく見開かれる。見られていた?シュナイダーとの情事を、翼に見られていたのか?
 「それで、気になってもう一度来てみたら、相手の男はいなくて、若林くんがすごくエッチな格好で寝てたからさ。俺もやらせてもらおうかなって。いいよね、若林くん」
翼が顔をぐぐっと近づけた。身体を前倒しにしたのでそれだけペニスの挿入が深くなり、若林がうめいた。翼は若林の口からタオルを抜き取り、若林にキスをした。若林は必死になって顔をそむけ、翼のキスから逃れる。翼が不満そうに言った。
 「なに、今の? あいつは良くて、俺じゃ駄目なわけ? 俺だって、若林くんを気持ちよくしてあげられるよ」
そう言って翼は腰を廻すように動かし始めた。若林のペニスが勃ちあがりかけているのを見ると、指先で輪を作りペニスに通してソフトに上下させた。ペニスが固さを増してきたのが判り、翼は得意そうに言う。
 「ほらね、俺でもイイでしょ? ねえ、若林くん。さっきの男は誰だったの?」
若林が答えようとしないので、翼は手の中のペニスをきつく締め上げた。痛みに耐えかねて、若林の口が滑る。
 「シ、シュナイダー・・・」
 「あいつかぁ。ねぇ、あいつと何回やった?」
翼は腰をみしみしと打ちつける。まるで若林の中で、翼のペニスがどんどんふくれあがっていくかのような圧迫感だった。この仕打ちに若林は、もはや隠し事など出来る状態ではなかった。
 「あ・・・ご・・・5回っ・・・!」
 「そんなに? やるなぁ」
翼の動きが早くなった。そして若林の先端をきつく握っていた手を離す。直後に射精が起こり、わずかながら精液が若林の上半身に飛び散った。一拍遅れて翼も限界に達した。翼がペニスを抜くと、大量の精液が若林のアヌスから溢れ出た。翼がつまらなさそうに言う。
 「あいつのが中に残ってるから、俺のが溢れちゃうんだな。嫌な感じ」
そして若林の身体に手足を絡ませるように抱きつくと、とんでもない事を言い出した。
 「じゃあ、俺はあいつの倍・・・10ゴールを狙っちゃおうかな。そうだ、10ゴール、10アシストにしよう。アシストってのは、若林くんをイかせることだからね」
若林は必死になって首を振った。一度にそんなに出来るわけがない! 身体がどうにかなっちまう!!
 「やめろ、翼! そんなの絶対無理だ!」
 「やってみなくちゃわかんないよ。若林くんが相手だったら、俺、何べんでも出来そう」
にぃーっと値踏みするような目つきで全身を眺められて、若林は寒気を覚えた。
 こいつにこんな性癖があるなんて、知らなかった。
シュナイダーに言われた言葉が、今更のように甦る。若林は懇願した。
 「俺は嫌だ! 止めてくれ! この手をほどいてくれ!」
 「駄目。ほどいたら逃げる気でしょ」
翼は若林の股間に手を伸ばし、うなだれているペニスを優しく撫でさすった。若林の首すじに舌を這わせながら、翼は楽しそうに囁いた。
 「お喋りしてる暇ないよ。まだノルマ(?)には程遠いんだから」

 ようやく日が昇り、朝を迎えた。若林が起きてこない為、合宿のサポートをしていた片桐が部屋まで様子を見に行った。そこで片桐が見たものは、全裸で両手をベッドに括られ、失神している若林の姿だった。身体中にキスマークがつけられ、全身精液にまみれている。レイプされているのは、誰の目にも明らかだった。
 協会内にはきつく緘口令が敷かれ、この事実はごく一部の人間にしか知らされなかった。若林が誰に襲われたのかを頑として言わなかったため、「若林は深夜侵入した強盗に襲われ負傷したため入院」ということにされた。
 救急車を見送りながら、全日本のメンバーは口々に心配そうに話し合った。
 「いつの間に強盗なんて・・・」
 「やっぱり金持ちそうだから、若林だけ狙われたのかなぁ」
 「若林さん、大丈夫だろうか・・・」
 (6ゴール4アシストしか、してないのになぁ。ああ、でも若林くんはあいつとヤった分も合わせて9回か。やっぱり、ちょっとキツかったかなぁ・・・?)
流石にちょっと気が咎めて、心配そうな顔をする翼に、何も知らない岬が声をかける。
 「翼くん、大丈夫だよ。若林くんのことだもの、きっと怪我を治して戻ってきてくれるよ」
 「岬くん、そう、そうだよね!若林くんなら、きっと大丈夫!」
若林が聞いていたなら「おまえが言うなぁーっ!」とブチ切れたことだろうが、幸いここには真実を知るものは翼以外いなかった。
 「よし、みんな! 若林くんの分まで、がんばろう!」
翼はキャプテンらしく、仲間に檄を飛ばし、練習の開始を宣言した。
お わ り

あとがき
 ここはシュナ源サイトだから、源三が縛られていたら相手は当然シュナの筈なんですが・・・どこをどう間違ったやら・・・(冷汗) しかも翼くん、外道だし。

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