強化合宿も終わり、肝心の国際試合も2-0で勝利を収めることが出来た。日本代表選手たちは、この結果に大満足だった。互いの健闘を称えあい、各々の所属チームへと帰っていった。
そして海外移籍組のメンバーも、懐かしい母国を離れ、それぞれの戦地へと戻っていく時が近づいていた。
日本のゴールを守り抜いた若林はドイツへ。
日本に勝利をもたらした翼はスペインへ。
強化合宿の間に身体の関係を結んでいたこの二人も、空港で別れの名残りを惜しんでいた。
いや、よく見ると名残惜しそうなのは若林だけで、翼の方は割合サバサバしていた。
「じゃあ、若林くん、元気でね!」
片手を挙げて軽く挨拶すると、翼はさっさと搭乗ゲートに向かった。少しずつ自分から離れていく翼を、若林は思わず呼び止めた。
「翼!」
「なに? まだ何か用?」
翼が足を止めて振り返る。笑顔を浮かべているが、その目は笑っていない。
『何も言うな』
翼の目はそう告げていた。
若林の胸が痛む。
昨日はあんなに激しく愛し合ったのに
昨日だけじゃない。合宿の間中、幾度肌を重ねたか知れない
何度互いを『好き』と呼び合ったことか・・・
だが俺たちは恋人じゃない
ただのセックスフレンドなんだ
『好き』と言うのも、セックスを愉しむための嘘に過ぎない
だからセックスが終われば、こうして何事もなかったかのように別れていく・・・
それは合宿の間中、翼に徹底して教え込まれた事だった。だが若林にはどうしても納得がいかなかった。
違う!
俺は翼が好きだ
嘘じゃない
翼だって、俺を好いてくれている筈だ
このまま何も告げずに別れるなんて、絶対に嫌だ!
若林は翼の傍に駆け寄った。翼の肩を掴み、真面目な顔で翼に向き合う。
「翼、俺は・・・」
翼がスッと人差し指を、若林の唇に当てた。手馴れた仕種。若林が想いを打ち明けようとする度、翼はこうして指一本で若林の告白を封じ込めてきた。
今も若林は、条件反射のように口をつぐんでしまった。それを見て翼が笑う。
「若林くんは物わかりが悪いなぁ。ハッキリ言われないと、判んないんだね」
そう言いながら、肩に乗せられた若林の大きな手を軽く払いのける。
「俺が好きなのは、早苗ちゃんだけなんだ」
この一言に、若林の心は凍りついた。
「そういうことだから、じゃあね。若林くん」
何事もなかったかのように、翼は踵を返して歩き出す。やがて翼は搭乗ゲートの奥へと姿を消した。
翼がいなくなった後も、若林はその場から動けなかった。
突っ立ったままの若林を、何人かの搭乗客が不審そうな目で見ながら通り過ぎて行った。
客室乗務員に案内され、翼はゆったりとしたファーストクラスのシートに身体を沈めた。程なく飛行機は滑走を始め、地表から飛び立った。小さく遠ざかっていく地上を眺め下ろし、翼はほっと息をついた。
(さっきは焦ったなぁ。公衆の面前でキスでもされたら、えらいことだった)
何とか無事に若林を振り切ることが出来て、翼は胸を撫で下ろした。
若林とのセックスは、文句なしに気持ちよかった。若林の感度がいいので、てっきりシュナイダーにあれやこれや教え込まれているのかと思いきや、そんなことはなく、若林は驚くほど性に関して何も知らなかった。
翼が新しいテクニックや体位を披露する度、若林は夢中になってセックスに溺れていった。何も知らない無垢な身体を自分好みに調教していくのは、男の征服欲を満たしてくれる楽しい遊びだった。
ただ問題がひとつあった。
性に関して開放的な翼と違い、若林は不器用な男だった。
若林は恋愛と性行為を切り離して考えることが出来なかった。
平たく言えば、セックスの相手を本気で好きになってしまうのだ。
いくら翼が本気になるなと言っても、若林は自分を抑えることが出来なかった。バカではないので人目のある所で迫るようなことはしなかったが、二人きりになると若林は必ず翼に本気で告白しようとした。その度に翼は『魔法の人差し指』で、その場その場をかわしてきたのだった。
しかし今回は二人の別れの時なので、若林も一大決心をしていたようだった。『魔法の人差し指』も効かないかもしれない。そこで翼は伝家の宝刀『俺が好きなのは、早苗ちゃんだけなんだ』を抜いたのだった。
翼の思ったとおり、純情な若林はこの一言にかなりのダメージを受けたようだった。そして翼の予想では、ああ言っておけば若林は早苗のことを慮って、このまま素直に身を引くはずなのだった。
(それにしても情が強いよなぁ。あんなにエッチな身体をしてるんだから、もっと気楽にセックスを愉しめばいいのに)
とにかくトラブルが無事回避出来て良かった。翼はシートを倒してアイマスクをかけた。
(今夜は久々に早苗ちゃんを抱かなきゃいけないから、今のうちによく眠っておこう)
切り替えの早い翼は若林のことなどすぐに忘れて、早苗の裸身を思い描きながら眠りについのだった。
一方、若林の方も何とか気を取り直し、こちらも飛行機に乗っていた。窓の外をぼーっと眺めながら、頭に浮かぶのは翼のことばかりだった。
合宿に合流した日から昨日まで、翼との情事は殆ど毎日何度も繰り返された。翼は若林を抱く度に、若林を『好きだ』と言った。そして行為が終わる度に、『あれは嘘だから、本気にするな』と念を押した。だが、若林にはどうしても信じられなかった。
好きでもない相手とこんなに深く愛し合える筈がない
俺が翼を想うように、翼も俺を想ってくれている
ただ、お互いの立場を守るため、好きではない振りをしているのだ・・・
「俺が好きなのは、早苗ちゃんだけなんだ」
翼の言葉が甦り、若林の心を乱す。
落ち着け
早苗を不幸にすることが出来ない以上、翼がああいうのは当然じゃないか
翼は早苗と俺の両方を愛しているんだ
そして早苗の為に、俺に気がない振りをしたんだ
「俺が好きなのは、早苗ちゃんだけなんだ」
でも
翼の言う事が本当だとしたら
勝手な思い込みをしていたのは俺だけで
翼は言葉どおり、セックスフレンドを求めていただけだとしたら・・・
若林の脳裏に、別れ際の翼の態度が目に浮かんだ。笑顔を浮かべながら笑っていない目。素っ気無い口のきき方。そしてあの言葉。
「俺が好きなのは、早苗ちゃんだけなんだ」
若林は俯き、顔を両手で覆った。自分の愚かさに、声をあげて笑い出したい気分だった。だのに現実には涙が溢れて止まらなかった。
飛行機は無事ドイツに着陸した。陽射しの暖かい良い天気だったが、若林の心は土砂降りだった。タクシーを拾おうと歩き出した途端、馴染み深い声が若林を呼んだ。
「若林!」
若林は声を無視してタクシーに乗り込みたい気分だった。声の主は今、一番会いたくない相手。
「・・・シュナイダー。迎えに来てくれたのか」
「ああ。向こうに車が停めてある」
シュナイダーはそう言って、若林のトランクを持ち、すたすたと歩き出した。てっきり真後ろを歩いていると思った若林が、タクシー乗り場に突っ立ったままなので、シュナイダーは慌てて若林を呼んだ。
「なにやってんだ! 早く来いよ!」
若林がのろのろとこっちに向かって歩き出す様子を見て、シュナイダーは得体の知れない不安を感じた。嫌な事が起こりそうな気がする。そんな気がした。
若林の家に着いた。当然のように家にあがりこもうとするシュナイダーを、若林は手で制した。
「送ってもらって悪いんだが、今日は帰ってくれないか」
「・・・・・・なんだか、よそよそしくなったな」
シュナイダーが空港で感じた不安は、どんどん大きくなっていた。
今日の若林は、いつもと違う。表情は固く、口数も少ない。しかも無意識に俺の方を見るのを避けている。まさか、若林に限って、そんな事はないと思うが・・・しかし・・・
確かめるしかない。シュナイダーは若林を突き飛ばすようにして、強引に家の中にあがりこんだ。後ろ手にドアを閉めると、若林を抱き寄せキスしようとした。
唇を重ねた瞬間、若林の脳裏に翼の顔が浮かんだ。
「やめろ!」
思わず若林はシュナイダーの身体を突き放した。
駄目だ
俺は翼のことを思い切れていない
こんな気持ちのままシュナイダーとキスなんか出来ない
シュナイダーは呆然として、若林を見た。もともと奥手でキスや抱擁を嫌がる男だったが、今の拒絶はそんなものじゃない。
間違いない
こいつ、浮気しやがった
日本で他の男と寝てきたんだ
だから後ろめたくて、俺を見られないんだ
「・・・・・・相手はツバサか?」
「!!」
若林は驚愕の表情を浮かべ、すぐに横を向いてしまった。何も言っていないが、『そうだ』と言っているも同然の態度だった。シュナイダーは厭味たっぷりに言った。
「ツバサと寝たんだな。ツバサがいるから、俺はもう用済みか?」
「違う!!」
「何が違うんだ!? 言ってみろ!」
若林が言葉に詰まる。辛うじてシュナイダーを見つめている瞳は、キョロキョロと泳ぎ回り落ち着かない。若林のオドオドとした態度はシュナイダーの怒りに油を注いだ。
面白い。どんな愉快な言い訳が飛び出すのか、じっくり聞いてやろうじゃないか。だが口先だけのくだらない言い逃れを言ったら、この場で殴り飛ばしてやる!
永遠に続くかと思われた気まずい沈黙を破って、若林が漸く口を開いた。
「・・・俺の恋人は、シュナイダーだけだ」
「ほう? じゃあ、ツバサは?」
若林がまた言葉に詰まる。だが今度はすぐに、返答をした。
「翼は・・・セックスフレンドだ」
意外な言葉が飛び出して、シュナイダーを心底驚かせた。セックスフレンド!? このうぶで奥手で俺が教えなければ何一つ知らなかった若林が、セックスフレンドと遊んでたって言うのか? 若林にそんな器用な真似が出来るとは、とても信じられない。
「ツバサが誘ったのか? セックスフレンドになろうって?」
若林が頷く。
「で、おまえはそれをオーケーしたんだな?」
「ああ。・・・でも・・・」
「でも?」
「初めは強姦されたんだ。そのあと・・・」
「強姦!?」
シュナイダーは肝を潰した。セックスフレンドと遊ぶのと、強姦では全然話が違う。
ちゃんと話を聞かなければ。若林は俺に嘘をついたりしない。ちゃんと話を聞いて、事情を把握しなければ。若林を責めるのは、そのあとだ。
シュナイダーは若林の手を取って、傍らのソファに座らせた。自分もその隣に腰掛け、口の重い若林に優しく声を掛ける。
「若林、怒らないから、最初から全部話してみろ。全部だぞ」
若林はシュナイダーが合宿所から帰った後の出来事を、包み隠さずシュナイダーに打ち明けた。若林は翼に好意を持っているため、ともすれば『悪いのは自分で翼は何も悪くない』というような表現を使いがちだった。しかしシュナイダーは翼に敵意と悪意しか持っていなかったため、若林の翼を庇うような表現を鵜呑みにはせず、結果として出来事は正確にシュナイダーに伝わった。
話を聞いたシュナイダーは、怒髪天を突く勢いで怒り出した。
「若林! そんなのはセックスフレンドじゃない! おまえが一方的にツバサに弄ばれ、捨てられたんだ!!」
「違う。本気になっちまった俺が悪いんだ。翼のせいじゃない」
「そうじゃないだろう! よく思い出せ! 誘いをかけてきた時、ツバサはいかにも若林のことを好きだという素振りを見せたんだろう? おまえは騙されたんだ!」
「だからそれは・・・俺が勝手に勘違いしてたんだ。翼は悪くない」
シュナイダーはこんな酷い目に遭わされながら、まだ翼を庇う若林の心理が理解出来なかった。
「若林・・・おまえ、まだツバサのことが好きなのか?」
若林は下を向いたまま答えない。若林がこういう曖昧な態度を取るときは、答えは大抵シュナイダーの気に食わない内容に決まっていた。シュナイダーは、もっと答を聞きたくない質問を、敢えて若林にぶつけてみた。
「俺より、ツバサのほうが好きなのか?」
「・・・判らない・・・判らないんだ・・・」
若林がうなだれ、重い口調で言う。
「俺はシュナイダーが好きだ。でも、翼も好きになっちまった。こんないい加減な気持ちじゃ、シュナイダーとはもう付き合えない」
シュナイダーは脳天をハンマーでぶん殴られた気分だった。
「な、なんで、そこで俺と付き合えないって話になるんだ!?」
「だって・・・俺はシュナイダーを裏切って、翼と寝たんだ」
「それはツバサの策略のせいだ! 若林が気にする事じゃない。そんなのは、浮気のうちに入らない。俺は許す!!」
「・・・優しいな、シュナイダー」
若林がシュナイダー見て、静かに言った。
「でも・・・駄目だ。俺は自分を許せない。俺にはシュナイダーと付き合う資格がない」
シュナイダーは混乱した。若林の思い詰めた気持ちは判らなくもない。それほどまでに自分を大切に想ってくれているという事だから、むしろ嬉しいくらいだ。しかし若林のいう通りにしたら、俺たちは別れなければならない。なんで、そうなってしまうんだ!?
全て、ツバサのせいだ! あいつが俺たちの間に割り込んでこなければ、こんなことにならなかったんだ!
翼が二人の仲に割り込むきっかけとなったのは、シュナイダーがはるばる日本まで若林に夜這いをかけたことなのだが、自分に都合の悪い事は当然のごとくこの際除外されていた。悪いのは全てツバサ。シュナイダーは必死になって考えた。
このままじゃ、ツバサ一人が美味しい思いをすることになる。くそっ、セックスフレンドなんて妙な事、若林に吹き込みやがって・・・。
このときシュナイダーに、あるアイディアが閃いた。シュナイダーは若林に言った。
「おまえの気持ちは良くわかった。そこまで思い詰めているのなら仕方ない。俺たちは別れよう」
「・・・・・・シュナイダー、済まない」
若林が目を伏せ、下唇をギュッと噛む。そこでシュナイダーはすかさず言った。
「それで、だ。俺も若林もフリーになったところで、どうだ? 俺たちセックスフレンドにならないか?」
「ええっ?」
若林が驚いて顔を上げる。シュナイダーが笑った。
「身体だけの関係なら、裏切ったとか、付き合う資格がないとか、関係ないだろう?」
「シュナイダー・・・」
「付き合いを続けていれば、俺たち必ず元の関係に戻れる。そう思わないか?」
「・・・・・・ありがとう、シュナイダー」
シュナイダーは、若林の肩をそっと抱いた。若林の負った傷は深い。だが俺が必ずその傷を癒して、ツバサのことを忘れさせてやる!
「じゃ、始めようぜ。俺たちはセックスフレンドなんだから」
若林が小さく頷いた。
いつものようにベッドの上で若林を可愛がってやろうとしたシュナイダーは、すぐにいつもとは勝手が違うことに気がついた。
例えばキス。いつもならシュナイダーが舌を入れ、それに若林がおずおずと応えるというのがお決まりのパターン。しかし今日は若林の方から進んで舌を絡めてくる。
例えば抱擁。いつもならシュナイダーにしがみつくばかりの若林が、今日は抱きつきながら器用にシュナイダーの服を脱がせている。
そしてベッドイン。いつもならベッドに寝そべり身体を固くしている若林を、シュナイダーが丹念に愛撫してその気にさせる。ところが今日は若林の方が、シュナイダーに積極的にキスや愛撫を繰り返している。それに負けじとシュナイダーが若林に触れると、どこに触れても可愛い喘ぎ声を漏らし、以前より格段に感度が良くなっている。
セックスに積極的な若林というのも捨てがたいが、シュナイダーは日本人独特の恥じらいを見せる若林が好きだったので、これにはいささか戸惑った。それに、この若林の変化は、ツバサが仕込んだからに他ならない。
ツバサと寝た事で、若林がここまで変えられてしまうというのは、本来のパートナーであるシュナイダーにとってかなりの屈辱であった。若林は悪くないと頭では納得した筈だったが、感情はまた別のもの。シュナイダーの中に、めらめらと嫉妬心が燃え上がってきた。
(ツバサの野郎、若林とどんなセックスをしてたんだ?)
「若林!」
シュナイダーの胸に舌を這わせていた若林が、顔を上げた。潤んだ瞳、うっすら開かれた唇から覗くピンク色の舌、陶酔しきった表情はぞくりとするほど悩ましい。
(くそ、こんな色っぽい若林の顔、初めて見るぞ・・・)
「若林、ツバサとやったこと、ツバサに教えられたこと、全部俺にもやってみせるんだ。ひとつ残らず、全部だ!」
若林はこれまたシュナイダーが初めて見るような艶然とした笑みを浮かべ、小さく頷いた。そしてシュナイダーの腰の位置まで顔をずらすと、何の躊躇いもなくシュナイダーのペニスを口に含んだ。
シュナイダーは驚きと快感で、腰を震わせる。
(い、いきなり、フェラかよ・・・)
しかも舌遣いが巧みで、実に気持ちいい。不器用な若林が、一度や二度でここまで熟練したとは思えなかった。若林・・・一体何べんツバサのを咥えたんだ・・・と思うと、シュナイダーの中の『ツバサ殺す!』ポイントが一気に上昇した。
まずい。このままじゃ、イってしまう。
シュナイダーは慌てて若林の髪を掴んで、途中で止めさせた。若林が不安そうに訊く。
「良くなかったか? 翼にもよく叱られたんだ。俺はすぐ歯を当てるから痛いって・・・」
「!!(ツバサ殺す!ポイント100Pアップ!)そうじゃない、とても気持ち良かった」
「本当に? 良かった」
若林が素直に喜ぶ。
「翼はあまり褒めてくれなかったんだ。確かに翼は上手くって、翼にやって貰うと凄く気持ちよくって、俺すぐにイっちゃうから・・・俺が早すぎて69が楽しめないって、よく怒られた」
「(ツバサ殺す!ポイント500Pアップ!)そ、そうか・・・(怒)」
「シュナイダー・・・これ・・・俺に入れてくれる?」
若林が屹立したシュナイダーのペニスを見て、おずおずと言った。シュナイダーはまたも驚く。若林の方から、こんな率直に欲しがるなんて以前にはなかったことだ。それに若林の方はまだ全然慣らしていない筈なのに、こんなことを言うなんて。
「いいけど、おまえのほうは・・・」
「平気。さっきおまえのしゃぶりながら、自分で慣らしてたから」
「いつの間に・・・」
「翼に言われたんだ。人にやって貰ってばかりいないで、自分でやってみろって。俺、翼が見ている前で、練習だからって何べんも自慰させられて、ちょっと恥ずかしかった」
「(ツバサ殺す!ポイント1000Pアップ!)ツバサの話はもういい! 入れるぞ!」
若林がちょっと驚いたように言う。
「ほんとに、もう入れてくれるのか?」
「だって、おまえが入れてくれって言ったんじゃないか」
「そうだけど、翼はいつもすぐ入れてくれなかったから。焦らされて、焦らされて、俺が翼の気に入るように『おねだり』しないと、ずっと放置されて・・・すごく辛かった」
「(ツバサ殺す!ポイント3000Pアップ!)俺はそんなことしない。入れるぞ」
シュナイダーが身体を起こそうとすると、若林が押し留めた。
「そのまま仰向けになっててくれよ。俺、自分で入れるから」
「自分でって・・・出来るのか?」
「ああ。翼が騎乗位が好きで、よくやってたから・・・翼が言うには・・・俺がよがってる顔は下から見上げるのが一番いいんだって・・・」
話しているうちに恥ずかしくなってきたのか、若林の声は段々小さくなっていた。しかしシュナイダーには勿論全部聞き取れた。
「(ツバサ殺す!ポイント5000Pアップ!)・・・わかった。無理するなよ」
若林はシュナイダーに跨り、シュナイダーのペニスにそっと手を当てると、自分の入り口へとあてがった。そしてそのまま少しずつ、腰を落とし始める。
シュナイダーは顔を起こして、自分のものが若林に呑み込まれていくさまをじっと見守った。じわじわと熱い柔壁に包まれる快感に、シュナイダーは腰を震わせた。若林が息を殺したようなせつない声をあげる。
「あっ・・・あ・・・はぁあ・・・」
ペニスはまだ三分の一程しか、挿入されていなかった。だが、シュナイダーはこのままじっとしていられなくなっていた。シュナイダーは腰を大きく持ち上げて、一気に若林を貫いた。ペースを乱された若林が悲鳴をあげる。
「あっ・・・シュナイダーッ・・・!」
「若林っ!若林ぃっ!」
シュナイダーは若林の腰を掴んで、上下に揺さぶった。若林の方でも腰を動かし、互いにより深い快感を味わおうとしていた。若林が喘ぐ。
「シュ、シュナイダー・・・触って・・・俺の・・・一緒に・・・」
シュナイダーは言われるままに若林のペニスを掴んだ。上下にこすりあげると若林がますま甘い声を漏らした。
「いいっ、気持ちいい・・・好きっ・・・好き・・・!」
若林は涙と涎を滴らせ、顔を上気させて感じまくっていた。その恍惚とした表情を下から見上げる事によって、更に淫猥さが増していた。
(すごい・・・若林がこんないやらしい顔を見せるなんて・・・)
シュナイダーは興奮した。若林を握る手と、腰の動きが早くなった。
若林の限界が近づいていた。若林は目を閉じ、上体をそらすようにしてその時を待った。
若林のペニスがシュナイダーの手の中で弾けた。同時にシュナイダーの腰の動きが止まる。
若林が望んだように、二人は同時に果てていた。二人は同時に叫んでいた。
「若林っ・・・!」
「つばさぁーっ!」
シュナイダーの『ツバサ殺す!』ポイントは、一気に1000000Pを突破していた。
絶頂を迎えぐったりと横たわっている若林を見て、シュナイダーは複雑な気持ちだった。恋人と最高のセックスを味わったのだから、本当なら満足感がある筈なのに、残ったのは怒りと嫉妬と殺意だけ。
もちろんその矛先は全てツバサに向けられている。
ツバサの野郎、俺の可愛い若林を、完全に自分用に調教しやがった。
確かにセックスは気持ち良かったけれど、それとこれとは話が別。
あの野郎、いつか必ず殺す!!
シュナイダーが大袈裟な表現としてではなく、本当に殺意を固めていようとは、早苗と新婚エッチ満喫中の翼には与り知らぬことだった。
お わ り
あとがき
前作を読んでくださった方から、「シュナにバレた方が面白い」とのご意見を頂きまして、早速バレた話を書いてみました。嫉妬に狂うクールなシュナを書きたかったのですが、基本的にバカ小説しか書けない性質なので、こんな話に・・・(笑)