リクエスト 「若林、俺の誕生日に何をくれる?」 チームメートのシュナイダーに聞かれて、若林は首を傾げる。 「おまえの誕生日って2月だろ? 随分気が早いな」 「いや、7月4日だ。明日だぞ。もしかして忘れてたのか?」 シュナイダーが気分を害したように言うのを聞いて、若林は慌てた。 「そうだったっけか? ごめん、なんかお前の誕生日って覚えにくくって」 詫びの言葉と共に言い訳めいた事も言ってしまい、しまったと思ったがもう遅い。シュナイダーがムスッと口を尖らせる。 「それは若林がその程度にしか、俺の事を気に掛けてないからだな」 「そんなことねぇって」 顔では怒って見せているが、シュナイダーの目からはこの状況を楽しんでるような感じが窺えた。しかし若林としては誕生日を忘れていた引け目があるので、どうしても気を遣ってしまう。それはシュナイダーがただの友人ではなく、若林にとって初めての恋人だからかもしれない。 シュナイダーとの付き合いは長いが、お互いを恋人として意識した交際が始まったのは若林がBミュンヘンに移籍した後、つまり今からほんの一ヶ月前だった。 シュナイダーの方はハンブルクJr.ユースで一緒だった時から、若林に対して事ある毎に積極的に迫っていた。そして若林はといえば、そんなシュナイダーを持て余しつつも決して嫌いにはなれず、付かず離れずの状態で友情を維持してきた。そんな関係を何年も続けているうちに、若林の気持ちにも微妙に変化が訪れた。今までガールフレンドも作らずにサッカーに打ち込んできたけれど、そろそろ恋人を作りたいという気になったのだ。 そして交際相手として若林の頭に真っ先に浮かんだのは、何年も前から自分に好意を示してくれていたシュナイダーだった。シュナイダーがフランクに自分への恋心を打ち明けていたせいか、同性の相手と付き合うことに対してはそれほど抵抗が無かった。それでBミュンヘンに移籍したのを機に、シュナイダーに「今更だけど・・・」と、自分から交際を申し込んだのである。シュナイダーに異論がある筈も無く、スムーズに交際がスタートした。 しかし友達付き合いをしていた相手が恋人になった事で、若林は色々と気を遣うことが多くなった。以前ならちょっとした行き違いがあっても、大して気に留めずやり過ごす事ができたのだが、相手が恋人だと思うと仲がこじれはしないかと妙に焦ってしまうのだ。 今もシュナイダーが本気で怒っていないとは判っていても、相手の機嫌を取らずにはいられなかった。頭では面倒臭いと思う反面、心では相手が気になって仕方が無い。これが恋というものなのだろう。若林はシュナイダーに提案する。 「そうだ、シュナイダー。リクエストないか?」 「リクエスト?」 「ああ。誕生日を忘れてた詫びに、何でもお前の欲しい物を贈るよ」 相手の希望を叶える事でシュナイダーに喜んで貰えると思ったのだが、シュナイダーはあまり嬉しくなさそうだった。 「俺にいちいち訊くなよ。若林は俺の欲しいもの、判ってるだろう?」 「えっ!?」 「前々から言ってたのに、覚えてないのかよ〜?」 ニヤニヤ笑いながらシュナイダーにそう言われて、若林はますます焦った。 「そう言われても・・・悪い。俺、判んねぇや。教えて!」 戯けた仕草で頭を下げるが、シュナイダーは答を教えてくれなかった。 「明日は俺の家に来いよ。その時までの宿題だからな」 そして翌日のシュナイダーの家。約束の時間きっかりに、若林は相手の家を訪問した。手土産に酒と食べ物を携えてはいるが、これはシュナイダーへの誕生日プレゼントではない。 丸一日考えて、若林はようやく「シュナイダーの欲しいもの」の見当をつけていた。前々からシュナイダーに欲しいと言われていたものといえば、他に思いつかない。 (でも、もし外れてたらすげぇ恥ずかしいな。俺たち、もう昔みたいなガキじゃないし・・・) 若林を迎え入れたシュナイダーは、若林の手土産を受け取ると早速尋ねてきた。 「で、俺へのプレゼントは?」 「あー・・・それなんだけど、ちょっと確認していいか?」 若林はソファに腰を下ろすと、シュナイダーに探りを入れた。 「それって、欲しいって言ったのは最近じゃないよな? Jr.ユースの時だったよな?」 若林の隣に座ったシュナイダーが、ニコニコしながら頷いた。 「で・・・、あの頃毎日のように、欲しい欲しいって言ってたやつ・・・だよな?」 この質問にもシュナイダーは大きく首を縦に振った。 どうやら自分の推理に間違いはなさそうだ。若林は面映い気分で、シュナイダーに答を告げた。 「お前が欲しいものって・・・俺?」 「大正解!」 シュナイダーは若林の肩に手を回し、若林の頬に軽いキスをした。自分の読みが当たっていたことに安堵しつつ、しかし本当にこれでいいのかと若林は不安になる。若林には、もう一点、シュナイダーに確認しておきたい事があった。 「あのさ・・・シュナイダー」 「なんだ?」 「俺、もう大人だけどいいのか?」 突然何を言い出すのかと、シュナイダーが訝しげに若林を見る。 「いや、だからさ。あん時は、その・・・ガキだったから、そういう気分になったと思うんだけど・・・今はもういい大人なんだし、そういう事は・・・えーと・・・」 しどろもどろの若林が説明したのは、以下のような内容だった。 あの頃の若林はシュナイダーより小柄だった。そのせいでシュナイダーの目には、若林が女の子のように可愛く映っていたのかもしれない。だから性愛の対象として、若林を求めたのだろう。だが今では若林の方が、上背もあり肩幅もガッチリしている。少年特有の中性的な要素は消え失せ、どこからどう見ても一人前の男だ。そういう男を相手にして、果たしてそういう気分になるのかどうか・・・? 「なるに決まってるだろう」 シュナイダーは若林の疑問を一蹴した。 「俺は別に少年愛趣味があるわけじゃない。若林が好きなんだ」 あっさりと言い切られて、若林の顔が赤くなる。 「でも、本当に俺でいいのか? そういうのに慣れてるわけでもないし・・・」 「却って嬉しいよ。俺が若林の最初の相手になるんだから」 「けどなぁ・・・」 シュナイダーの気持ちは嬉しいが、いざセックスとなると気後れしてしまい、若林は尚も何かを言おうとした。しかしシュナイダーは若林の唇に自分の唇を重ねて、それ以上の反論を許さなかった。 恋人になってからというもの、若林は何度もシュナイダーとキスをしている。しかしそれは挨拶的な意味合いの軽いキスが多く、こんな風に話の途中で強引に唇を塞がれたのは初めてだった。若林は驚きのあまり顔を離そうとしたが、すぐに抵抗を止めた。舌を絡ませ唾液を舐めあうような濃厚なキスを、愛する相手と交わしているのだと思うと止めるのが惜しくなってしまったのだ。 たっぷり2分以上かけてキスを楽しんでから、シュナイダーは唇を離す。そしてキスの余韻で呆然としている若林に、微笑みかけながら言った。 「俺が何年待たされたと思ってるんだ? もう言い訳は聞かないぜ」 若林はせめて夜になってからとごねたが、シュナイダーは聞く耳を持たなかった。若林を半ば強引に寝室に連れ込み、ベッドに座らせるとちょっときつい口調で問い詰める。 「忘れたのか? 若林は俺のリクエストを聞いてくれるんだろう? 俺のリクエストは『若林と今やりたい』、これだけだ!」 若林とて本気で嫌がっているわけではないので、こう言われて覚悟を決めたようだ。大人しく服を脱ぎ全裸になると、前を隠すようにしながら大急ぎでベッドに潜り込む。若林の隣に寝そべったシュナイダーには、若林がガチガチに緊張しているのが伝わってきて、その初々しさについ笑みが漏れた。 「あんまり固くなるなよ・・・あ、ここは固くても構わないからな」 若林のペニスを擦りながら軽口を叩くと、若林は何と返していいのか判らずシュナイダーから顔を背けた。 他人の手に性器を弄ばれるのは異様な感覚で嫌悪を覚えたが、緩急をつけて扱かれているうちに段々気持ちよくなってしまった。ペニスを扱いてやる度に若林の全身から力が抜けていくのが判って、シュナイダーは気を良くする。 ペニスを弄る一方で、シュナイダーは若林の身体にくまなくキスを落とした。舌をちろちろと這わせ、少しでも若林が反応した箇所はすこしきつく吸い、若林の身体にいくつものキスマークを残す。乳首を咥えた時に若林が声を漏らしたので、そこは特に念入りに愛撫した。両の乳首が赤みを帯びて固く尖ったのと合わせる様に、シュナイダーに握られていた若林の先端から精液が飛び散った。 「あ・・・・・・」 若林が切なげな声を上げた。かなり溜まっていたらしく、シュナイダーの見ている前で、若林は腰を震わせ二度三度と連続して濃い目の汁を吹き上げる。自分の手管で若林が悦んでくれたのが判って、シュナイダーは嬉しくてたまらない。が、口ではわざと若林をからかうような事を言う。 「おまえ、たまにはオナニーくらいしろよ。あんまり溜め込んでると身体に悪いぜ」 「・・・るせぇ・・・余計なお世話だ」 若林は身体の向きを変え、不貞腐れたようにシュナイダーにそっぽを向いた。 「おいおい、自分だけイって終わらせる気か」 シュナイダーに言われて、若林はそうだったと慌てて身を起こす。 今日はシュナイダーの誕生日なのだ。自分もシュナイダーを気持ちよくしてやらなければ・・・と思ったのだが、見ればシュナイダーの一物は手で刺激を与えるまでも無く、とっくに勃ちあがっていた。それでも最後までイかせなければと若林が手を伸ばすと、シュナイダーはそれをやんわりと断った。 「俺は手より、こっちがいい」 シュナイダーはそう言うとローションを取り出し、それを右手指にたっぷりと浸した。そして若林に脚を広げさせると、ぬるぬるした指をアナルへと差し込む。指が入り込んだ瞬間、若林の身体が強張り、シュナイダーの指を食い千切らんばかりに締め付けた。 「おい、きつ過ぎるって。もっと力を抜いてくれ」 「で、でもっ・・・すげ、痛くって・・・」 「参ったな。指でこれじゃ、肝心なモノが入らないぞ」 シュナイダーの困惑した声を聞いて、痛みに気をとられていた若林は我に返った。 (そうだ。俺がこんな状態じゃ、シュナイダーが楽しめないじゃないか。今日はシュナイダーの誕生日なんだから・・・) 若林は深く息をついて、力を抜くように心掛けた。若林がその気になってくれたので、アナルの締め付けが少し緩くなった。この時とばかりにシュナイダーは若林の中を掻き混ぜ、ゆっくり丁寧に若林を解す。かなり時間は掛かったものの、やがて若林のそこは複数の指を出し入れできる程に柔らかくなった。指を挿入したときに何度か前立腺を刺激したので、痛みに苦しんでいた若林もいつしかペニスを半勃ちさせて気持ち良さげに喘ぐようになっていた。 「挿れるぜ」 シュナイダーは小声で宣告してから、己のペニスを若林の入り口にあてがった。若林の準備が出来るまでお預けを食っていたせいで、亀頭からはたらたらと先走りの汁が滴っている。シュナイダーは若林の腿を抱えると、一気に腰を沈めて若林の中を突き進んだ。 いかに慣らしてあるとはいえ、太い男根を根元まで突き刺され、若林はあまりの痛みに全身を硬直させる。痛みが酷過ぎて声すら出せず、若林は苦悶の表情でベッドの柵を握った。 「わかばやしっ・・・力、抜いて・・・」 挿れたはいいが、締め付けがきつくて動きが取れず、シュナイダーが若林に声を掛ける。そう言われても今度ばかりは思うように力が抜けず、若林は思い余って自分の一物を扱き始めた。力任せに擦っているうちに、段々アナルの方からも快感が伝わってきた。シュナイダーが少しずつ腰を揺らし、ペニスを抽送しているのだ。 (きつい・・・けど、・・・凄い! こんなに締りがいいのは初めてだっ・・・) シュナイダーは暫し無言で、行為に熱中した。 「うぅっ!」 シュナイダーが一声呻く。それと同時に、若林は体内に熱いものが流れ込むのを感じた。 (あ・・・やっとおわった・・・) そう思った途端に、右手に握られていた若林のペニスからも、精液がぴゅっと迸った。 苦労の末に初体験を終えて、若林はぐったりとベッドに突っ伏してしまった。シュナイダーもくたくただったが、若林よりは負担が軽い。暫く息を整えているうちに、目の前で息づく形のいい尻にもう一度挿れたくなってしまった。 「あのさぁ・・・若林」 遠慮がちに呼びかけると、若林が顔をシュナイダーの方に向けた。しかし目はとろんとしていて、何となく焦点が合っていない。 「・・・・・・なんだ?」 「二回目、いい?」 シュナイダーの率直なリクエストに、若林は弱弱しく首を振る。今日は確かにシュナイダーの誕生日だが、流石に連続はきつ過ぎる。 「ごめん。俺、今日はもう無理」 「そうか。かなり辛そうだったもんな。じゃ、続きは明日って事で・・・」 「明日ぁ!?」 若林はげんなりした声で愚痴る。 「明日だって無理だよ。そんな早く回復できねぇ・・・」 「じゃ、いつ頃ならいいんだ?」 若林とのセックスにすっかりハマッってしまったシュナイダーは、若林を気遣いつつもそれが気になって仕方ない。しかし若林の返事は実につれなかった。 「そうだなぁ・・・これって誕生日のプレゼントだったんだから・・・来年、だな」 「・・・・・・冗談だと言ってくれ」 シュナイダーは若林の顔を覗き込みながら、わざと情けない声で言った。 おわり
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