もともと奥手な若林は、どうしたらいいのか判らなくなってしまった。シュナイダーがい つもしてくれる事を真似すればいいと軽く考えていたが、自分の手管でシュナイダーが感じて喘ぎ声を洩らすようになるとは思えなかった。ソファに並んで腰掛けたまま、若林はシュナイダーに何も出来なくなってしまった。
 「どうした?」
若林が大人しくなってしまったので、シュナイダーが尋ねる。このままむっつり押し黙っていても、何も始まらない。若林は観念した。
 「あの・・・シュナイダー・・・」
 「ん?」
余裕を感じさせる笑みを湛えて、シュナイダーは若林の言葉を待つ。こうなる事が見透かされてるような気がして、若林は素直に降参するのがちょっと悔しい。なので、こんな言い方をしてみた。
 「今日は、俺の好きなようにしていいんだから・・・俺がシュナイダーに命令してもいいんだよな?」
 「ああ、当然さ」
どんな命令を期待したのか、シュナイダーの目が好奇心に輝いたのが判り、若林は可笑しくなる。
 「じゃあ、俺に・・・えーと、その・・・俺が気持ちよくなるように、サービスしろ!」
この「命令」に、シュナイダーは目をぱちくりとさせた。今日は若林の誕生日だから元々そのつもりではあったが・・・若林は自分の好きにやってみたいのではなかったのだろうか。
 「若林、それは俺が好きなようにしてもいい、って事か?」
 「ん、まぁ・・・結局はそうなる・・・かな?」
若林がきまり悪そうに苦笑するのを見て、シュナイダーのつい吹きだしてしまった。さっきは偉そうな口を叩いていたが、やっぱり若林は奥手なのだ。
 「わかった。じゃ・・・」
シュナイダーは身を乗り出し、若林の上に覆い被さるようにしてキスをした。若林からする時のソフトなキスとは違い、愛する人の口腔を執拗に追い求める深く激しい接吻だった。舌を絡ませ、唾液を滴らせながらキスを続けるうちに、二人の身体は否応なしに昂ぶっていく。
 シュナイダーが唇を離し、若林の耳元に囁いた。
 「若林・・・しようぜ。最高に気持ちよくしてあげるから・・・」
熱のこもった深いキスに全身蕩かされてしまった若林は、何も言わずただ濡れた目でシュナイダーを見つめ返す。それが肯定の意思表示だという事は、シュナイダーにはちゃんと通じていた。
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