酔っぱらって気持ちよく寝入っていた若林は、夢うつつの中で妙な感覚を味わっていた。
温かい何かが身体をさわさわと這い回っているような感じである。それも一箇所ではなく、首から胸、腹から腿と広範囲に渡って、何かが一斉に自分の肌の上を蠢いている。くすぐったいような、むず痒いような異様な感覚だ。
(なんだ・・・これ・・・?)
煩く感じて、その何かを払いのけようとしたが何故か手が動かせない。動かせないのは手だけではなく脚も同様で、若林はどうやら自分が両手両脚を広げた格好で、四肢を何かに押さえつけられているらしいと気付く。
「んっ・・・」
唇に急に柔らかいものが押し当てられた。キスされたのだとすぐに判ったが、なんだかやり方がぎこちない。それにキスされたのと同時に、相手の髪と思われるさらさらとしたものに顔を覆われ若林は混乱する。恋人のシュナイダーは短髪で、若林に覆い被さる格好でキスしたとしても、その金髪が若林に触れる事は有り得ないのだ。
(シュナイダーじゃない・・・!)
若林は目を開いた。顔が近過ぎて一瞬相手が判らなかったが、すぐに気がついた。
(井沢!?)
手足が動かせないので、若林は首を強引に動かし井沢のキスから逃れた。すると井沢が顔を離したので、若林の視界が一気に開けた。
井沢だけでなく、滝、来生、高杉、森崎、さっきまで一緒に騒いでいたメンバー全員が、思い詰めたような表情で若林の顔を覗き込んでいる。若林はいつの間にやら全裸に剥かれており、森崎が若林の両腕を、高杉が若林の両脚をベッドの上に押さえつけていた。そして残りの3人がでんでに若林の身体を撫で回しているのだった。一瞬、ゲームの続きの悪ふざけかと思ったが、それにしては皆の表情が真剣そのもので、若林はうろたえる。
「な・・・なにを、やってるんだっ!?」
「なにって、お祝いですよ。今日は若林さんの誕生日じゃないですか」
井沢がキスの余韻を味わうかのように唇を舐めながら言った。
「俺達、皆で相談したんですよ。若林さんの誕生祝、どうしようかって」
「それで、皆で若林さんを気持ちよくしてあげよう、って話がまとまったんです」
森崎と来生が熱にのぼせたような口調で説明するのを聞いて、若林は背筋が寒くなった。
「そんな誕生祝はいらん! 俺から離れろ!!」
「駄目ですよ〜、そんな嘘ついても。俺達、ちゃんと判ってますから」
高杉の含みのある言葉に、若林は不安を覚える。
「俺達、若林さんが嫌がる事を無理矢理しようとは思いません。若林さんが、そういう趣味の人だって判ったから、こうやってご奉仕してるんですよ」
若林の太腿を撫でていた滝が、指先をしゃぶって濡らしたかと思うと、それを若林のアナルにつぷりと挿入した。突然の刺激に、若林は身を捩り悲鳴を上げる。
「あっ、あぁーっ!」
「ほら、こういう風にされるの、若林さん好きでしょ?」
続いて来生の手が若林の股間に伸び、若林のペニスを激しく扱き始める。井沢は若林の胸に顔を寄せ、乳首を舌先で可愛がり始めた。性感帯を同時に責められて、若林は堪らず声を上げた。
「やった。若林さん、ちゃんと感じてるよ・・・」
若林をベッドに押さえ込む役目の高杉と森崎が、顔を見合わせ安心したように笑みを浮かべた。
彼らは最初から、若林を襲おうと思っていたわけではない。野球拳で盛り上がっている最中に若林が寝てしまったのを見て、若林が一人だけ服を着ているのは不公平だから脱がせてしまおう、と話がまとまった時には誰もこんな事は考えてなかった。酒の上での悪い冗談に過ぎなかったのだ。
ところが若林の裸身を見た途端、彼らの理性の箍は外れてしまった。元々若林に対して尊敬や憧憬以上の深い好意を寄せていた彼らには、若林の裸体はあまりにも刺激が強すぎた。いけないと思いつつ、高杉がおずおずと若林の胸に触れ乳首を摘んだ、その時。
若林は甘い息を吐きながら、寝言でシュナイダーの名前を呼んでしまったのだった。
一同を襲った衝撃と驚愕は、すぐに嫉妬と劣情に変化した。シュナイダー一人に俺達の若林さんを独占されてたまるものか。俺達だって、若林さんを悦ばせる事は出来るんだ・・・!
「うぅっ!」
来生の手の中で大きく反り返っていた若林が、ビクリと震えたかと思うと勢いよく射精した。若林が達したのを見て、一同はうっとりと息を漏らす。来生は手についた精液をぴちゃぴちゃ舐めながら、美味しいと呟いた。
「滝、そっちもいいんじゃないのか?」
「そうだな。若林さんの中、すげぇ柔らかくなってるから・・・」
高杉に答えながら、滝は若林の中から指を抜いた。すると、それまで若林の足首を押さえていた高杉が、身体を乗り出して若林の両腿を抱え込む。腰を持ち上げられる体勢に、若林はこの後何が起きるかを悟り、抵抗を試みるが殆ど効果は無かった。
「行きます、若林さん!」
高杉は一声宣言すると、若林のアナルに己の一物をずぶりと挿入した。若林の扇情的な姿を間近に見ていた高杉には、最早相手を気遣う余裕は無く、ただ己の快楽ばかりを求めてがしがしと乱暴な抽送を繰り返す。
「おぉっ・・・若林さんの中、熱くて、ぐちゅぐちゅで、気持ちイイ・・・」
「うぁあっ! や、止めろっ、止めてくれ、高杉・・・」
若林は身体を捩って逃れようとするが、両腕を森崎に、身体を滝と来生に押さえられ動く事ができない。素面の時ならまだしも、酔いで身体に力が入らない今、若林にはただ拒絶の声を上げることしかできなかった。
「おい、若林さん痛がってるぞ」
「もっと気持ちよくしてあげないと・・・!」
「任せろ」
そう言うなり、井沢が若林の股間に顔を近付け柔らかくなっていたペニスを咥えこんだ。熱い舌に舐られた瞬間、若林は無意識に高杉を締め上げていた。
「あっ、わかばやしさん・・・イくっ!」
高杉がブルッと腰を震わせ、若林の中で果てた。高杉が終わったのに気付いて、森崎が大声で叫ぶ。
「おい、早く代われ! 次は俺の番だぞっ!」
ベッドの上でバタバタと位置を代わる男達をぼんやり見上げながら、既に若林は抵抗する事を諦めていた。この人数が相手では、到底逃げ出す事は出来ない。
(今日はこいつらの好きにさせるしかない・・・)
若林は観念して、目を閉じた。そんな若林の様子を、感じて悦んでいると思ったのか、彼らは嬉々として若林を犯し続けた。一人が終わればすぐ次の男が、若林の中に猛ったペニスを突き立てる。順番が待てない者は、若林の口に己の一物を突っ込んだり、自慰をしてザーメンを若林にぶっかけたりした。順番が一巡しても彼らは満足せず、一晩中若林の身体を貪り続けたのだった。
若林が目を開けると、薄暗い部屋の中にカーテンの隙間から僅かに差し込む朝陽が見えた。
(・・・・・・朝になっちまったのか)
自分を抱え込むように重なり合って眠っている男達の腕をどかしながら、若林はのろのろとベッドから降りた。 立ち上がった途端に下腹に痛みが走り、アナルからは数人分の精液がだらだらと伝い落ちる。指で忌まわしい情交の痕を出来る限り掻き出すと、若林は脱ぎ散らかされた服の中から自分の着衣を拾い上げ身につけた。
「・・・若林さん」
部屋を出ようとすると、背後から呼び止められた。振り返ると、起きたばかりらしい井沢が裸のままベッドに半身を起こして、こちらをじっと見つめている。
「若林さん。帰っちゃうんですか・・・?」
「ああ」
「あの、若林さん。俺達は・・・昨日、あんな事したけど・・・本気であなたの事が・・・」
「言うな」
若林は暗く沈んだ目で、井沢を見つめ返す。
「こんな事はこれ一回きりだ。他の奴らにも言っておけ」
無言で項垂れる井沢に背を向け、若林は部屋を出て行った。