心の中では悪かったと反省したものの、口に出すのは照れ臭く、若林はシュナイダーに何 も言わなかった。いくら謝っても若林が口をきいてくれないので、シュナイダーは途方に暮れる。言葉が通じないのなら態度で、とばかりに若林にキスをしようとしたが、若林は顔をそむけてキスも拒んでしまった。
 「若林・・・本気で怒ってるのか?」
シュナイダーが寂しそうに問い掛けるのにも、若林は答えない。怒ってるわけではないのだが、今更謝るのが妙に恥ずかしいのだ。元々若林は、自分が悪いと思ったら素直に謝る事の出来る、真っ直ぐな気性の持ち主なのだが、今夜は変に片意地を張っている。酒を飲み過ぎたせいで、持ち前の頑固な性格が悪い形で出てきてしまったのかもしれない。
 若林は自分を抱き寄せようとするシュナイダーの手を振り解き、ソファから立ち上がった。
 「悪いけど、今日は疲れてるんだ。俺、もう寝るよ」
 「あ・・・ああ、それは構わないけど・・・」
若林の後を追うようにソファから腰を浮かしたシュナイダーを、若林はジロッと睨みつける。
 「ベッド借りるけど、今夜は変な事はナシな? 俺は普通に眠りたいんだ」
若林の素気無い言葉に、シュナイダーは失望を隠せない。しかし若林がへそを曲げてしまったのは自分の失言が原因なので、気落ちしながらもシュナイダーは頷いた。
 「・・・・・・わかった。俺はこの部屋のソファを使うから、ゆっくり眠ってくれ」
若林はシュナイダーに頷いてみせると、お休みも言わずに部屋を出た。そして寝室に行きベッドに上がりこむと、やれやれと手足を伸ばした。
 (なんか・・・シュナイダーとギクシャクしちまったなぁ)
さっきの落胆した様子のシュナイダーを思い出し、若林の胸がちくちくと痛む。こんな筈では無かったのに・・・と思いつつ、こうなってしまうとシュナイダーのいる居間にノコノコ戻るのも気が引けて、結局若林は一人ベッドの上で布団にくるまった。
 (とにかく今日はこのまま眠ろう。でも、明日になったら・・・)
明日になったら、シュナイダーにおはようを言って、それから今日の事を謝ろう。ちょっぴり重い気分を引きずりながら、若林は瞼を閉じた。
バッドエンド9
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