「何を言ってるんだ! 本気の筈ないだろう。冗談だよ」
若林は真顔でシュナイダーに向き直った。冗談にせよ、自分の言葉がシュナイダーを傷つけてしまったのなら誠心誠意詫びるべきだ。自分の失言でシュナイダーが心を痛めているなんて、とんでもない事だ。
 「・・・済まない、シュナイダー。お前の気持ちも考えずに、つまらん冗談を言ってしまって・・・」
 「若林・・・」
 「俺、誕生日だからって、調子に乗ってた。本当にごめん!」
若林はシュナイダーに向かって、深く頭を下げた。若林の真摯な謝罪を見て、強張っていたシュナイダーの表情が柔らいだ。
 「いいんだ。俺の方こそ、変な事言って済まなかった。ただ、ちょっと・・・不安だったんだ」
シュナイダーは若林に顔を上げさせると、きまり悪げに言った。
 「若林は、俺といるよりツバサたちと一緒の方が楽しいんじゃないか、って・・・くだらない嫉妬だと判ってはいるんだが、一人でいるとどうしてもその事が浮かんできて」
 シュナイダーの手が伸びて、若林の身体を抱き締める。
 「今頃、ツバサや他の誰かが、若林をこうやって抱いてるのかもしれないと思うと・・・そんな筈はないと頭では思っても、どうしても気になって・・・バカだよな」
 自分もシュナイダーの身体に腕を回しながら、若林が頷く。
 「ああ、バカだ。俺がシュナイダーより他の誰かを選んだのなら・・・俺が今、ここにいる筈ないだろう?」
 若林は自ら顔を寄せ、シュナイダーにそっと口づける。そして唇を離すと、シュナイダーの目を見て断言した。
 「好きな奴、大事な奴は大勢いる。でも・・・俺が愛しているのは、シュナイダーだけだ」
 「若林・・・!」
感極まって若林の名を呼ぶと、シュナイダーは若林に覆い被さるようにしてキスをした。若林がしたソフトなキスとは違い、愛する人の口腔を執拗に追い求める深く激しい接吻だった。舌を絡ませ、唾液を滴らせながらキスを続けるうちに、二人の身体は否応なしに昂ぶっていく。
 シュナイダーが唇を離し、若林の耳元に囁いた。
 「若林・・・しようぜ。乾杯用のワインやプレゼントも用意してあるけど、そんな事より・・・」
若林が顔を寄せてシュナイダーの唇を塞いでしまったので、もうそれ以上の言葉はどちらの口からも発せられなかった。しかし、会話をしなくとも、若林の気持ちもシュナイダーと一緒だった。
 ワインやプレゼントよりも、若林はシュナイダーが欲しくてたまらなかった。
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