石崎は若林の顔を叩いたり、耳元で怒鳴ったりしてみたが、爆睡モードに突入してしまった若林は何をやっても一向に起きない。
 「ったく、気持ち良さそうに眠りこけやがって・・・」
何をしても起きない若林を見ているうちに、石崎の顔に悪戯心が芽生えてきた。
 「久し振りに、アレをやるか!」
石崎は自分のバッグを持ち出すと、中から一本の極太油性マジックペンを取り出した。何故こんな物があるのかというと、街中でサインを求められた時にすぐ応じられるように、というファンに対するサービス精神から、石崎はどこに行くにも油性マジックを携帯しているのである。尤も今はサインをする為にマジックを取り出したわけではない。
 「昔は若林の犬に眉毛を書いたけど、今日はどうすっかな〜」
まずは顔にヒゲでもかいてやろうかとマジック片手に近寄るが、ふと気が変わって石崎は若林が着ている服を捲り上げた。
 「顔じゃたくさん書けないからな。それにすぐバレちまうし。ここはいっちょ、『ボディペインティング』で行くぜ!」
 そこから先は、石崎のやりたい放題だった。まずは若林の乳首を目に見立てると、その周りに睫や眉毛を書き加え、続けて腹に団子っ鼻と分厚い唇、渦巻きほっぺを書き足して不細工な顔を完成させた。胴体にラクガキスペースが無くなると、今度は若林のパンツを下ろして、下腹部に陰毛をもじゃもじゃと書き足し、矢印を引っ張って『ギャランドゥー!』と書きなぐった。更にラクガキを続けていると、くすぐったくなったのか若林が寝返りを打ってうつ伏せになったので、今度は背中に背番号やらSGGKの文字やらをロゴっぽく太く書き、更に尻には『バックオーライカマーン』『HGフォー!』と書き込んだ。
 すっかりお間抜けな姿になってしまった若林を見て、石崎は腹を抱えてゲラゲラ笑った。しかし若林は相変らず起きない。息が苦しくなるほど笑った後で、石崎は涙目をこすりながら言った。
 「ったく、マジ寝しやがって。これじゃ、俺が眠れねーじゃねぇか!」
さっきの言葉通り若林を床に転がしてやろうとして、流石に腹出しフルチンでは風邪を引くかと仏心を出し、石崎は若林の服をちゃんと着せ直した。それからありったけの力で若林をベッドから引き摺り下ろすと、若林の身体を無造作に床に転がした。
 「ま、こうやって寝心地の悪いとこで寝てれば、そのうち起きんだろ」
そしてさっきまで若林が寝ていたベッドに上がりこむと、石崎も大鼾をかきながら眠ったのだった。

 寒気を覚えて夜中に目を覚ました若林は、自分が本当に石崎の部屋の床で眠り込んでしまった事に気付き、狼狽した。
 (しまった! シュナイダーの家に行く筈だったのに・・・いや、今からでも行こう。約束したんだから・・・)
 若林はあたふたと起き上がると、石崎の部屋を抜け出し、シュナイダーの家へと一目散に向かった。
 間もなく朝日が昇ろうかという時間に押しかけてきた若林を、幸いにもシュナイダーは暖かく出迎えてくれた。
 「飲み会が楽しくて時間を忘れてしまったんだろう? 気にしてないよ。昨日は若林の誕生日だったんだからな」
 笑顔で優しく言われ、若林は安堵すると共に心の広い恋人にますます惚れ直してしまった。
 「外は寒かっただろう? 暖炉の前に来いよ暖まるぜ」
シュナイダーに誘われるままに、若林はシュナイダーと並んで暖炉の前に腰を下ろす。赤々と燃える火の前で身体を寄せ合っていると徐々に気分が高まってきて、二人は自然に口づけを交わした。そしてシュナイダーの手は、若林の服を一枚一枚、丁寧に脱がしていく。ところが・・・
 「若林、これは何だ!」
上半身裸にされたところでシュナイダーに突然怒鳴られ、若林は訳が判らず目を丸くする。
 「服を脱いでみろ! 全部だ!」
言われるままに全裸になった若林を、シュナイダーは鏡の前に連れて行く。姿見に映った自分の裸像を見て、若林は叫喚した。
 「なんだこりゃあーっ!? い、石崎の野郎・・・」
 「おい、お前とイシザキは一体どういう関係なんだ?」
シュナイダーの冷たい声に嫉妬の気配を感じて、若林は慌てて説明をする。
 「小学校の時からの友達だけど、昔っからこういうバカな冗談をする奴なんだ。お前が心配するような事は何も無い。ただのサルの悪戯だから、気にしないでくれ」
 「気にするなと言われてもな・・・」
シュナイダーの視線は若林の股間の一物に注がれている。そこに『ビッグマグナム!!』のラクガキが施されているのに気付き、若林は頭が痛くなってきた。
 「あのバカ、調子に乗りやがって・・・」
 「そんな大事な所にまでラクガキさせておいて、何も無かったと言われても信じられん」
 「そんな! それは誤解だ!」
若林は必死になって身の潔白を訴えるが、猜疑心にとらわれてしまったシュナイダーは何を言っても信じてくれない。真っ裸のままでシュナイダーに弁明を続けながら、若林は石崎に怒りを向けるのだった。
 (あの野郎、今度会ったら頭からペンキぶっ掛けてやるっ!!)
バッドエンド5
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