「大丈夫。俺も参加させて貰うよ」
若林はそう言って井沢に笑いかけた。今日は昔馴染みだけが集まっての無礼講だ。この面子だったら、少々羽目を外しても構わない。
 「若林さんもオッケーですね? じゃ、くじ引きで順番を決めましょう!」
高杉が張り切って音頭を取る。その結果、一回戦は滝対来生、二回戦が高杉対井沢、三回戦が森崎対若林という組み合わせになった。
 「それじゃあ、一回戦始め〜!」
滝と来生が立ち上がると、周りの者が手拍子と共に大声で歌を囃し始めた。
 「アウト!」
 「セーフ!」
 「よよいのよいっ!」
ポンポンとテンポ良く勝負は進み、男同士の気楽さで二人はどんどん服を脱いでいく。そのうちにどちらもパンツ一枚になってしまった。これ以上続けたら、負けた方は全裸になってしまう。
 (この勝負、引き分けって事でここで終わりだな)
若林はそう思ったのだが、何とそのまま勝負は続行されてしまい、負けた滝は皆にやんやと冷やかされながらパンツを脱いでスッポンポンになってしまった。
 「いい脱ぎっぷり!」
 「滝、かっこいーぞー!」
変に隠そうとせず、堂々と裸になった滝に酔っ払い連中の賞賛が飛ぶ。滝はおどけた仕草で周りの声援に応えてみせると、全裸のまま腰を下ろしてまた酒を飲み始めた。勝利者である来生も服を着ようとはせず、パンツ一枚の姿で新しい缶ビールに口をつけている。どうやらこの勝負、終わったからといって服は着ないのがルールらしい。
 (参ったな。俺も負けたら素っ裸か)
とても飲まなきゃやってられんと、若林はビールを口に運ぶ。二回戦はあいこが続いて、決着が着くまでに結構時間が掛かったが、若林はその間手拍子をサボって酒を飲み続けていた。
 「よよいのよいっ!」
 「勝負あったー! 井沢の負けー!」
皆に囃し立てられながら、井沢がパンツを下ろす。さて、次はいよいよ自分の番だ。酒のせいで少々ふらつく頭を押さえながら、若林は腰を上げる。若林が森崎に向かい合うようにして立つと、座は今まで以上の盛り上がりを見せた。
 「森崎っ、負けるなー!」
 「森崎、勝ったら何でも奢ってやるぞ!」
 「がんばれー、森崎ーっ!」
自分を応援する奴はいないのかと内心むくれながら、若林は掛け声に合わせてじゃんけんをする。周囲の森崎コールに圧倒されたわけでもないのだろうが、若林は立て続けに負けてしまった。若林が服を一枚脱ぐたびに、場は異様な盛り上がりを見せた。
 「うおぉ〜、若林さん、いい身体・・・」
 「すげぇ筋肉・・・ナイスバディだぁ〜」
 「やべ〜、俺コーフンしてきたぁ!」
何となく他の連中が脱いだ時と反応が違うなと思いつつ、若林はじゃんけんを続ける。
 そしてとうとう、一同が期待していた瞬間が訪れた。パンツ一枚になっていた若林が、負けてしまったのだ。勝負が決まった瞬間、若林を除く全員が大喜びで歓声をあげた。
 (あ〜あ。本当に負けちまったぜ・・・)
正直気は進まなかったが、ここで躊躇ったりしたら先に全裸を晒した二人に悪い。酒の勢いもあって、若林はパンツを脱いだ。
 その直後、若林には信じられないような事が起きた。周りにいた連中が、目を血走らせながら自分に抱きついてきたのだ。
 「若林さ〜ん!」
 「す、好きですっ! 愛してますっ!」
 「もう、我慢出来ない!!」
 「うわっ!! 何すんだ、お前ら!」
股間を臨戦態勢にして襲い掛かってくる男達を次々に突き飛ばし、はねのけながら、若林は慌てて部屋から逃げ出した。ところが廊下に飛び出して、追っ手を遮るべくドアを閉めた瞬間・・・
 「いやぁぁぁぁーっ!!」
 「きゃあぁっ! 変態よーっ!!」
複数の女性の悲鳴が耳に飛び込んできて、若林は焦る。タイミングの悪い事に、若林が全裸で飛び出した廊下には、エレベーターから降りたばかりの女性客集団が歩いていたのだ。
 まずい!と思ったものの、自分を襲おうとしていた連中がいる部屋にも戻れず、若林は股間を両手で隠しながら女性客たちの前から逃げ出した。背後からは警備員を、いや警察を呼べと騒いでいる声が聞こえて、若林は冷や汗をかく。咄嗟に目に付いたトイレに飛び込み個室に隠れたものの、いつまでもここにいるわけにもいかない。素っ裸で便器に腰掛た若林は、この先自分を待ち受けているであろうトラブルを考え頭を抱えた。
 (なんで俺がこんな目に・・・最低の誕生日だ・・・!)
バッドエンド8
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