若林は翼の髪に触れると、そっと相手の顔を抱き寄せた。そして自分から、翼と唇を重ねる。唇が触れた瞬間、翼は驚いたように目を見開いたが、キスを拒もうとはしなかった。それどころか、自分から顔を押し付けるようにして若林のキスに応えたのだった。
 角度を変え、息を継ぎながら、接吻は延々と続いた。かなりの時間をキスに費やしてから、二人はようやく顔を離す。どちらの表情も、酒の酔いとは違った心地良さに酔いしれている。
 「翼・・・嫌がらないんだな・・・?」
若林が翼の顔を見上げながら、不思議そうに尋ねた。酔った勢いも手伝って、ついキスをしてしまったが、まさかこんな風に受け入れられるとは思わなかったのだ。翼は若林の瞳を覗き込むようにしながら、若林に答える。
 「だって、嫌じゃないから」
そして翼は目を細め、嬉しそうに笑いかけた。
 「ちょっとビックリしたけど、相手が若林くんだから。俺、若林くんならキスしても嫌じゃないよ」
 「・・・・・・翼」
翼の言葉は、若林の中に眠っていた想いを呼び覚ましていた。シュナイダーと出会い、恋に落ちて以来、ずっと心の奥底に仕舞いこまれたまま決して表に出ることはなかった、表に出してはいけなかった想い。
 それは翼に対する恋心だった。
 「翼・・・俺となら、キス以外の事をしても平気か?」
 「それって、若林くんと・・・その・・・セックスする、って意味?」
若林がそうだと告げると、翼は何かを言いかけて、急に口ごもった。戸惑った様子の翼を見て、やはり男同士の性交は無理かと、若林は内心落ち込む。しかし翼が口にしたのは、拒絶の言葉ではなかった。
 「いいよ。俺、若林くんが相手ならやってみたい」
 「いいのか?」
 「うん。でも俺、女の子相手のしか知らないから・・・若林くんと上手く出来るかどうか、それが心配。正直、やり方とか判んないし」
 翼が戸惑いを見せていた理由が判り、若林は安堵する。翼は男相手の初体験に不安を感じているだけで、自分との行為を嫌がってる訳ではないのだ。
 「それなら、俺が教えてやるよ。大丈夫、男も女もそんなに変わらねぇから」
 「え〜? そうかなぁ」
 「本当だって」
苦笑いを浮かべる翼に、若林は真面目な声で告げる。
 「男でも、女でも、好きな相手と身体を重ねたいって思うのは一緒なんだ」
若林に真っ直ぐ見つめられて、翼は笑いを引っ込めた。
 「・・・うん。判るよ」
若林の言葉に、翼は深く頷いた。

 二人はベッドの上で抱き合い、キスをして絡み合いながら、お互いの服を引っ張って一枚一枚脱がしていった。肌が露出すれば待ちかねたように唇を寄せ、手を這わせて相手の反応を確かめる。裸になって脚を絡めながら、お互いの一番感じるところを捜して、二人は互いの肉体をまさぐり続けた。若林のペニスを握りゆるやかに扱きながら、翼が囁く。
 「若林くん、どう・・・?」
 「・・・あ・・・いい・・・。上手いぜ、つばさ・・・」
若林は息を弾ませながら、翼を褒める。それから翼の手を自分のアナルに導くと、指で慣らしてくれとせがんだ。翼は若林の言葉に従いながら、唾液で濡らした指を若林のアナルに挿れ、じわじわと中を解し続ける。翼の指が不器用に蠢く度に、若林は苦しげに息を吐く。
 「あっ・・・くぅっ・・・」
 「若林くん、良くなかった?」
 「・・・いや、平気だ・・・続けて・・・」
若林のアナルを弄くっているうちに、翼は自分がすっかり興奮している事に気付いた。尻穴を刺激されて喘いでいる若林の姿が最高になまめかしく見えて、翼は若林を可愛がりながら空いた方の手で自分のペニスを扱いていた。
 (すごい・・・女の子のじゃないのに、俺・・・若林くんのここに挿れたくて堪らない・・・!)
 やがて、慣れないながらも時間を掛けて愛撫を続けるうちに、若林の中は充分男を受け入れられる状態になっていた。若林は翼に指を抜かせると、自ら脚を大きく広げて翼を待ち望んだ。翼はすっかり張りつめてしまった自身を握り締めながら、若林に尋ねる。
 「若林くん・・・このまま、いいの? 俺、ゴム持ってなくって・・・」
 「・・・構わない・・・だから、早く・・・っ」
若林も翼も、最早我慢の限界だった。翼はすぐに若林の入り口に己の先端をあてがうと、そのままぐっと力強く挿入する。若林の熱い肉壁に包み込まれた瞬間、翼はイきそうになってしまい、唇をきつく噛んで辛うじて堪えた。
 「つばさ・・・もっと、もっと深く・・・」
若林が更なる刺激を求めて、翼をきつく締め付ける。
 (うわっ・・・これじゃ、すぐイっちゃうよ・・・)
翼は負けじと大きく腰を振り始めた。テクニックも何もない、本能だけが顕になった無骨なやり方である。だが日頃シュナイダーに大事に扱われている若林には却って刺激的だったらしく、翼に突き上げられる度に若林は全身で感じまくっていた。
 「あっ、あっ・・・あぁっ、つばさ・・・」
 「わかばやしくん、俺、もう、もう・・・っ!」
若林は腕を伸ばして、翼の身体を引き寄せた。お陰で挿入が更に深まり、二人は同時に強い快感を味わっていた。
 「あっ・・・」
 「うぅっ!」
翼は若林に挿れたまま、若林は自分と翼の腹にペニスを挟まれたまま、どくどくと精液を吐き出していた。
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