若林は翼と一緒に飲みに行く事にした。どのメンバーも大事な仲間だが、自分にとって翼
はやはり特別だ。見れば、翼の周りには岬や松山、三杉など既に何人かのメンバーが集まっている。やはり翼は人気があるなと思いつつ、若林もその輪の中に加わり翼に声を掛けた。
「翼、俺も一緒に行っていいか?」
「若林くん! もちろん、大歓迎だよ!」
翼が酒で赤くなった顔に笑顔を浮かべて、嬉しそうに答えた。酔っていても素面と変わらぬ元気の良さに、若林の顔にも思わず笑みが浮かぶ。
「それじゃ、俺の知ってる店に行こう。そんなに高くないし、居心地のいい所だぜ」
「本当! さすが若林くん、頼りになるなぁ〜」
「まぁ、一応地元だしな」
普段にも増して陽気になっている翼が、親しみの籠もった仕草で若林の肩を叩く。翼に頼りにされて、若林はちょっとイイ気分だ。
「それじゃ、早速その店に行こう! 若林くん、道はどっち?」
「ん、あぁ、こっちだ」
若林が道を指し示すと、翼は頷いて若林の腕に自分の腕を回した。そして若林を引っ張るようにして、皆の先頭に立って歩き出す。翼に腕を取られながら歩くのが楽しくて、若林は気分が弾んできた。
その後一行は若林が案内した店に行き、大いに飲み、楽しく騒いで時間を過ごした。そのうちに二次会もお開きとなって、一行はぞろぞろと宿泊先のホテルに向かう。途中までは方角が一緒なので、若林も皆と連れ立って同じ道を歩いているが、飲み過ぎたようでその足取りは大分覚束ない。見るからに危なっかしい様子の若林を気遣って、翼が声を掛けてくれた。
「若林くん、俺の部屋に寄って休んでいったら?」
すると若林が答える前に、横を歩いていた岬が口を挟んだ。
「あ、いいなぁ。僕も翼くんの部屋に遊びに行っていい?」
「もちろん! 今日の飲み会では、岬くんとあんまり話せなかったからね」
「よかった〜。僕も、もっと翼くんと話したかったんだ」
楽しそうなゴールデンコンビの会話を聞きつつ、若林は酔っ払った頭でぼんやりと考える。最初の店でも二軒目の店でも、自分は翼の隣の席を占領していた。自分にはそんなつもりは無かったのだが、もしかすると仲のいい翼と岬の邪魔をしてしまっていたかもしれない。
「じゃ、若林くん、俺の部屋で岬くんも一緒に3人で話そうよ!」
翼にそう言われて、若林は考えた。
翼と岬は、本当は二人だけで話したいんじゃないかな?
「折角だけど、俺はもう帰るよ」
いや、そんな事はないだろう。俺も仲間に入れて貰おう。
「ああ、そうしよう」
そういえば、俺も岬とはあまり話してなかったな・・・
「俺は、岬とゆっくり話をしたいな」
でも正直言うと、翼ともっと一緒にいたい!
「俺は、翼とゆっくり話をしたいな」