若林は井沢と一緒に飲みに行く事にした。見れば井沢の周りには滝、来生、高杉に森崎と、小学生当時から自分を慕ってくれた懐かしい顔ぶれが揃っている。
 若林が近付いて声を掛けると、井沢たちは一斉に顔を輝かせた。
 「若林さ〜ん!!」
 「良かった! 若林さんは翼たちと飲みに行くんじゃないかと思って、声を掛けようかどうしようか迷ってたんですよ」
 「嬉しいなぁ、二次会も若林さんと一緒で!」
 「あ、でも・・・若林さんは外で飲みたいんじゃないか?」
森崎が困ったように言うのを聞き咎め、若林が尋ねる。
 「ん? お前ら、どこで二次会をする気だったんだ?」
 「ホテルです。酒とつまみを買ってって、井沢たちの部屋で時間を気にしないで騒ごう、って相談してたんですよ」
滝の言葉に、若林が笑顔で頷く。
 「なるほど、いい考えだな。俺は別に構わないぜ」
 「やった! じゃ、早速みんなで買い物に行きましよう!」
こうして一行は酒とつまみを調達すると、遠征チームが宿泊しているホテルへと向かったのだった。
 選手用に取ってある部屋は全てツインルームになっている。男6人が集まるといささか狭かったが、仲のいい者ばかりが集っているので大して気にならない。むしろ顔つき合わせるようにして、雑談しながら酒を飲むのが面白かった。そうしてガヤガヤと騒ぎながら酒を飲んでいるうちに、興が乗ってきて何かゲームをしよう、という事になった。
 「ゲームったって、トランプも無いのにどうすんだよ?」
言い出しっぺの高杉に、来生が質問する。高杉は缶ビールを飲みながら、自慢げに説明を始めた。
 「道具なんか無くったって、遊べるだろ。日本には、野球拳というシンプルで盛り上がれるゲームがあるじゃないか!」
 「野球拳〜!?」
高杉の言葉に、一同どよめく。しかし全員アルコールが入って気分がハイになってるからか、反対する者は誰一人いないのだった。ただ一人、井沢だけが若林を気遣って小声で聞いてきてくれた。
 「どうします、若林さん? こういうの、嫌じゃないですか?」
やろうやろうと盛り上がってる一堂を見回しながら、若林は何と答えたものか考えた。

 「大丈夫。俺も参加させて貰うよ」

 「シード参加なら、俺もやってみるかな」

 「俺は見てるから、お前ら好きにしろ」