「悪いけど、今日は少し遅くなるかも・・・」 
シュナイダーに会いたいのは山山なのだが、久し振りに日本の仲間と過ごせるこの楽しい時間を、もう少し長く過ごしたい。シュナイダーには申し訳ないけれども、今日は大目に見てくれないだろうか・・・という旨の事を、若林は言葉を選びながら丁寧に申し出た。話を聞いているシュナイダーは面白く無さそうだったが、若林の気持ちは判ってくれたようで最後には渋々ながらも折れてくれた。
 『まぁ、今日は若林の誕生日だしな。若林がしたいと思う事をすればいいさ』
 「すまん、我侭を言ってしまって」
不満気な様子ではあるけれども何とか恋人を説得する事ができたので、若林はホッとする。
 『遅くなるだけで、俺の家には来てくれるんだろ?』
 「ああ。もちろん行くよ」
 『それならいい。待ってるからな』
その一言を残して、通話は一方的に切られてしまった。シュナイダーの素っ気無い態度に、若林は少々ムッとする。すぐに会えなくて苛立っているのは判るが、子供じゃあるまいしあんなに不貞腐れなくともいいだろうに。
 若林が携帯を仕舞いながら椅子に座り直すと、隣に座っていた翼が声を掛けてきた。
 「若林くん、誰と話してたの?」
 「ん? ああ、友達」
シュナイダーと付き合っている事は公には伏せているので、若林は曖昧に誤魔化した。すると翼は屈託のない笑顔で言った。
 「そっか。随分長く話してるから、てっきり彼女かと思ったよ」
 「彼女?」
 「うん。デートの相談とか、してるのかと思った」
 「・・・まさか」
一瞬言葉に詰まった若林は、それだけ言うと、翼の詮索を避けるようにジョッキに手を伸ばし、ぬるくなったビールを呷った。

 若林が電話を切ってから程なくして、そろそろ店を出て一旦解散しようという話になった。しかし飲み足りないと思ってる者も多いようで、どうやら少人数のグループに分かれて二次会に向かう様子だ。
 シュナイダーには遅くなると断りを入れてあるので、若林も二次会に参加する事にした。若林は居並ぶメンバーの顔を見回し、誰と一緒に飲みに行こうかと考えた。



石崎

井沢

その他