「源さんと遊園地に行きたい、か?」
さすが、幼馴染のカルツは俺のことをよく判っている。正しく、そのとおりだ。
 「若林をまともに誘っても、自主トレを放り出して俺と遊園地に行ってくれるとは思えない。お
まえの舌先三寸で、若林をうまく丸め込んでくれないか?」
 「・・・えらい言われようだな」
それでもカルツは承知してくれた。二人連れ立ってJr.ユースチームの練習場に行くと、予想通
り若林がトレーニングルームで黙々と汗を流していた。
 「おーい、源さん」
カルツが陽気に声を掛けると、若林がトレーニングを中断してこっちにやって来た。早速カルツ
が、若林に事情を説明する。初めは渋っていた若林だったが、口の上手いカルツに『マリーち
ゃんの為だ』『人助けだと思って』『シュナイダーも大変なんだぞ』などなどと畳み掛けるように言
われて、最終的には俺と遊園地に行くことを承諾してくれた。
 流石は仕事師。俺一人だったら、こう上手くは運ばなかっただろう。俺はカルツに感謝を込め
た眼差しで(若林に聞こえないように)礼を言い、若林を急きたてて遊園地へと向かった。

 日曜ということもあって、遊園地は大混雑だった。家族連れやカップル、女の子同士のグル
ープなどが、広い筈の園内をすっかり埋めつくしている。
 「男同士で来てるのは、俺たちだけだな」
若林がうんざりしたように言う。そんなに嫌がるなよ。俺としてはデートのつもりなのに・・・。
 「とにかく、おまえがアトラクションの中にいるところや、着ぐるみと一緒にいるところを、俺が
カメラに収めればいいんだな?」
若林が念を押すように言った。そう、カルツが『病気のマリーちゃんが、兄貴が遊園地で楽しそ
うに遊んでいる写真を見たがっているから、カメラマンを務めてやってくれ!』と吹き込んだから
こそ、若林は重い腰を上げてくれたのだった。話の辻褄を合わせるためにも、若林にはせいぜ
い写真を撮ってもらわなければならない。
 「ああ、頼むぜ」
 「じゃあ、どこに入ろうか」

 ホラーハウスに入る
 ジェットコースターに乗る
 着ぐるみステージを観る