「これから、おまえの家に行っていいか?」

  「俺んちに? いいけど、なんで?」

  ぐっと言葉に詰まる。あっさり承諾してもらえたのは嬉しいが、理由を聞かれるとは思わな

 かった。まさか、おまえに告白したい、とは言えない。

  「おまえに・・・聞いてもらいたい話がある」

  「へぇ? なんだか深刻そうだな。よし、俺でよければ相談に乗るよ」

  友情に厚い若林は、快く請け負ってくれた。




  若林の家に着いた。家に入ると、若林は大声で言った。

  「見上さん、ただいまー!」

  ミカミ。忘れていた。若林は保護者代わりの見上コーチと、同居していたんだった。すぐに

 部屋の奥から、見上が顔を出す。

  「おかえり、源三。おや、シュナイダーも一緒か」

  見上に挨拶を返しながら、俺は考えた。保護者の見上がいる所で、若林に告白は出来な

 い。なんとかして見上を遠ざける方法はないものだろうか。


  嘘をついて、見上を家の外に締め出す。


  仮病を使って、若林に付きっきりで看病してもらう。


  何も思い浮かばない。