「何だよ、約束は守ったじゃないか!」
若林はシュナイダーに向き直り、ムッとした声で言った。
 「今夜は遅くなるって言ってあっただろう? シュナイダーだって、判ってた筈じゃないか。今になって嫌味を言われる筋合いはないぞ!」
 「嫌味だって? そんなつもりは・・・」
急に若林が怒り出したので、シュナイダーは戸惑う。さっきまでは機嫌が良かったのに、どうやら今宵の若林は悪い酔い方をしているらしい。
 (若林の誕生日に、若林を怒らせてしまってどうする! すぐに謝ろう)
即座に反省したシュナイダーは、すぐに若林に頭を下げた。
 「ごめん。悪気は無いんだ。気に触ったのなら謝るよ」
そう言ってシュナイダーは若林の身体を優しく抱き締める。
 「楽しい飲み会を切り上げて、俺の元に帰って来てくれたのに・・・若林の気持ちも考えずに勝手な事を言って、本当に済まなかった」
 シュナイダーは若林の耳元に唇を寄せ、詫びの言葉を何度も囁いた。半分言い掛かりのような文句だったのに、シュナイダーがあまりにも素直に謝ってくれたので、若林は申し訳ない気分になってくる。酔いが残っているせいかもしれないが、些細な事に腹を立てて相手を責めるなんて、我ながら大人気ない事をしてしまった。シュナイダーに抱き寄せられながら、若林は考えた。

ちょっと意固地になってたな。俺も素直に謝ろう。

でも今更謝るのはきまりが悪いな。

話を逸らしてみよう。