「待たせてしまって、本当にごめん」
若林はシュナイダーに頭を下げた。
「シュナイダーが待っててくれてるって判ってるのに、こんな時間になるまで飲んでくるなんて・・・身勝手な事をして、本当に悪かった。済まない!」
シュナイダーの手を掴み、がばと頭を下げる様子を見てシュナイダーは慌てて声を掛ける。さっきまで楽しそうにしていたのに、急にこんな風にしょげ返るなんて。どうやら今宵の若林は、酔いのせいでナーバスになっているらしい。
(若林の誕生日に、若林を落ち込ませてどうするんだ! 早く謝らなくては・・・)
「いや、若林は悪くない。俺の方こそ、嫌味みたいな言い方して悪かった」
「そんな事はない。俺が変に絡んだりしたのが悪いんだ」
「いや、悪いのは俺だ」
「違う。俺が悪いんだ」
「いいや、俺が・・・」
必死に謝っていたシュナイダーが、急にプッと吹きだした。互いに自分が悪いと主張し合っているのが滑稽に思えてきて、つい笑い出してしまったのだ。悪かった悪かったと言いながら、笑いをこらえきれない様子のシュナイダーの姿が可笑しくて、若林の顔にも笑みが浮かぶ。互いに顔を見合わせて、シュナイダーと若林は大声で笑い出した。
「悪かったのは、お互い様、だな」
「ああ」
ひとしきり笑った後で、シュナイダーが飲み会はどんな様子だったのかと若林に尋ねてきた。若林は酒の席で上がった話題や一緒に飲んでいた皆の酔態などを思い出しながら、酒宴の様子を楽しげにシュナイダーに話し聞かせる。ひとしきり話し終わると、若林は最後をこう締め括った。
「また、翼たちと飲みに行きたいなぁ」
「ずっと、あそこにいても良かったなぁ」
「でも、本当を言うとシュナイダーの事がずっと気になってたんだ」